「ウォッチメン」と漫画家に対する高度な技術への指標
アメコミなんて日本の漫画に比べたら鶏糞並でしょ。
うんちうんち。
こう考えていた自分に忸怩の念を与えたのがウォッチメンだった。
ロールシャッハのかっこよさ。
ロールシャッハというキャラの純粋な魅力だけでこう思えたのだ。
作者の後書きを読むと「恐怖の対称形」という回を描いていて楽しかったとある。
何かあっただろうかと思い、調べてみるとこの回は真ん中のページを境に対称的に描かれていると分かった。
古代遺跡の、建物自体が秀逸なパズルになっているタイプの、建築者から突きつけられる試練をネタバレありで解いたような気分だった。
他にも細かな所で、日本人に分からないニュアンスや政治に関する小ネタが詰め込まれていて映画化不可能と言われた訳がやっと分かった。
寄生獣で市長が正面を向いていたシーンがあったがあれが何十何百といった数描写されていて良い。
そしてこれは漫画家になりたい人間が読むべき本でもあると思うのだ。
理由として3つ挙げる。
1 前述の通りの表現技法
同人誌を読んでいると吹き出しが男性器の形になっているものを見つけた。
それは男の台詞であったが少女に向けられていて性欲をベクトルとして上手く視覚化した表現であったと今でも思い出す。
あまり読む方ではないが僕が漫画を読んで良いと思った表現はこれとウォッチメンくらいだ。
2 絵柄
ウォッチメンの絵柄はかっこいいものであるが恐らく今の日本の潮流には乗れない。
勿論乗る必要も無い程名実のある作品だが。
ワナビーにはリスペクトも重要だが、「今に見ておれ」と燃える嫉妬であったり「俺の方が上手い」と言い切れる高慢さが必要であると思うのだ。
幸いウォッチメンの絵は萌え絵では無いので素晴らしい脚本や圧倒的な表現技法に気圧されても「でも俺アラン・ムーア(ウォッチメン原作者)より萌え絵上手いし」とマウントを取って邁進して欲しい。
(アラン・ムーアが描かない画風なだけでやろうと思えば描けるかもしれないというのは伏せておきたかったが。)
3 年齢
後書きには1984年に構想したと作者は語る。
生まれが1953年だから単純計算で31歳の頃これを描いたのだ。
30歳には20から初めても10年。
22から初めても8年ある。
ワナビーはその業界の有名人のデビューをよくチェックしていると思うので、是非30までにウォッチメンを超える作品を描いて欲しい。
(勿論それ以前に活躍していただろうが)
ただ、ウォッチメン含めアメコミは日本の漫画に比べ高価で手が出しにくいので、アメコミを鶏糞と思っている輩は買わないだろう。
また、自分も映画から入ったクチだが、映画では100パーセントを表現出来ていないので、是非原作を読んでその上、解説サイトを見て楽しんで欲しい。
勿論映画も面白かったが